「バーチャルオフィス」という言葉の響きは、アングラなイメージを想起させます。怪しく感じてしまうのは無理からぬこと。第一、オフィスの住所だけ借りて自分の住所を隠したいだなんて、悪いヤツが考えそうなことですし。
しかしバーチャルオフィスは、
- 家で仕事ができるので、オフィスの家賃を払うのは勿体無い!
- 自宅の住所を晒したくない!
といった、真っ当な理由があって使うサービスです。時代に求められて登場したサービスであり、当然違法ではありません。
この記事では、バーチャルオフィスが違法ではない法律的な根拠を示すとともに、信頼できるバーチャルオフィスを選ぶポイントを解説しています。
もしバーチャルオフィスを検討しているなら、ネガティブな印象はしっかり払拭しましょう。ぜひこの記事を読んで懸念を晴らしてください!
バーチャルオフィスが違法ではない3つの理由
まず結論からいきましょう。バーチャルオフィスが違法ではない理由を、法律の観点も踏まえて解説します。
①一般論として、他人の住所を使うことは違法ではない
そもそも他人様の住所を私的に利用すること自体に、何か違法めいたイメージを感じる人も多いでしょう。
しかし自分以外の住所を借りることは、一般的にもよくあることです。
- 私書箱
→郵便局の住所を借りて、郵便物を受け取る - コンビニ受け取り
→コンビニの住所を借りて、宅配物を受け取る
一般論で言えば、住所を貸す人と借りる人で、双方合意が取れていれば何ら問題ありません。
②法人登記の本店所在地には制限がない
法律的に1番気になるのが、「バーチャルオフィスで法人登記して良いのか?」という点ではないでしょうか?
実は、法人登記の際に記載する本店所在地に特段の制限はなく、どこの住所を使っても申請可能です。もちろん違法ではありません。
活動実態を問われているわけでもないため、移転前の旧住所のまま登記している企業もありますし、絶対にありえない皇居の住所で登記している企業もいるくらいです。
③特定商取引法の表記でも認められている
消費者が安心して取引できることを目的に定められている「特定商取引法」では、ネットショップのサイトに住所を掲載することを義務付けています。
消費者庁の見解として、次のような内容が公開されています。
「住所」については、法人にあっては、現に活動している住所(通常は登記簿上の住所と同じと思われる)を、個人事業者にあっては、現に活動している住所をそれぞれ正確に記述する必要がある。いわゆるレンタルオフィスやバーチャルオフィスであっても、現に活動している住所といえる限り、法の要請を満たすと考えられる。
消費者庁より引用
「現に活動している住所」でなければならないと規定されており、どこでもOKな法人登記よりは厳しめの設定になっています。
ただバーチャルオフィスを使えば、商品の発送元や返品・交換品の送り先として、バーチャルオフィスの住所を使います。「現に活動している」と解釈するには十分でしょう。
特定商取引法に関しては、次の記事でより詳しく解説しています。
【注意】バーチャルオフィスが違法となる業種もある
基本的には合法なバーチャルオフィスですが、一部の許認可が必要な業種は違法になってしまいます。
- 一部の士業
- 人材派遣業
- 有料職業紹介業
- 探偵業
- 不動産業
- 建設業
- 古物商(中古品販売・リサイクルショップ)
- 廃棄物処理業・不用品回収業
- 金融商品取扱業者
- マッチングサイト(出会い系)
- 風俗業
この記事を読んでいる人が該当することはそうないと思いますが、士業はひっかるかもしれません。弁護士や税理士は、バーチャルオフィスNGなので注意しましょう。
詳細は次の記事で解説しています。
【経緯】なぜバーチャルオフィスは「怪しい」と感じるのか?
というわけでバーチャルオフィスは一部の業種を除けば合法であり、後ろめたいことは何もありません。
にも関わらず怪しいイメージを抱いてしまうのは、バーチャルオフィスに関するネガティブなニュースや噂話を見聞きしたからかもしれません。
バーチャルオフィスが犯罪に使われたことがある
バーチャルオフィスは何といっても、
- 住所がバレず身元が特定されづらい
- 何かあってもトンズラしやすい
- だけど住所は一等地なので信用されやすい
ということで、詐欺などの犯罪に使われてきた過去があります。
- 投資商品を装った詐欺
- ヤミ金
- 偽ブランド品販売
現在はバーチャルオフィス関連の犯罪ニュースを聞く機会は減ってきている印象ですが、それでも0ということはないでしょう。
また背景として、2008年に「犯罪収益移転防止法」が施行されるまでは、バーチャルオフィス側の本人確認が必須でなかったということも、犯罪を助長した要因と言えるでしょう。
「犯罪収益移転防止法」で法人銀行口座を開設しづらくなった
「犯罪収益移転防止法」は、字面からも想像できる通り、マネーロンダリングを防止するための法律です。かつて存在していた「組織犯罪処罰法」と「本人確認法」を統合し、ブラッシュアップした形で2008年3月1日に施行されました。
そして犯罪収益移転防止法の対象に、バーチャルオフィスも含まれることとなりました。
「バーチャルオフィスは犯罪の温床になる可能性がある(少なくとも過去はそうだった)」と明るみに出たわけですから、銀行としては、バーチャルオフィスユーザーの審査を厳格にせざるを得なくなりますよね。
結果として、「法人を設立したが銀行口座を開設できない!」というケースが散見されるようになりました。
銀行からしても、口座開設する人が、「真っ当に起業しようとしている人」か「悪意を持って法人格を取得する人」かの判断は困難です。危ない橋を渡れない銀行に、「疑わしきは排除」というベクトルが働きやすかった可能性は否めません。
情報商材界隈でもバーチャルオフィスが使われることが多い
現在進行形でそうですが、「情報商材屋」と呼ばれる人たちもバーチャルオフィスを使うことが多いです。物理的なスペースを必要としないため、バーチャルオフィスが打って付けというわけです。
情報商材は違法ではありませんが、一部の悪意ある者が中身のない商品を高額で販売するなどして、トラブルが後を絶えません。まさに合法詐欺といった感じ。
そんな背景から、しばしば「情報商材」とセットで使われる「バーチャルオフィス」にもネガティブなイメージが植え付けられているのかもしれません。
法人銀行口座が開設できないわけではない
「犯罪収益移転防止法」の施行以降、バーチャルオフィスユーザーの審査が厳しくなったのは間違いないでしょう。そもそもリアルオフィスがある会社に比べれば信用は劣るので、審査に不利なのは当然ですが。
しかしバーチャルオフィスだからといって、法人銀行口座の開設ができないわけではありません。同様に融資やクレジットカードの発行が不可能なわけでもありません。
同法が施行した2008年といえば、日本で初めてiPhoneが販売された年です。あれからずいぶん時間が経ち、インターネットビジネスへは市民権を得て、個人の起業が当たり前になりました。
ネット銀行は、バーチャルオフィスに対して比較的寛容です。「バーチャルオフィスだからという理由で排除することはなく、あくまで事業内容で判断する」とコメントしているメガバンクもあります。
「バーチャルオフィス=銀行口座開設ができない!」というフレーズは、すでに過去のものになりつつあります。
信頼できるバーチャルオフィスを選ぶ6つポイント
バーチャルオフィス自体は違法ではないものの、バーチャルオフィスに入居している会員に悪徳業者が潜り込んでいる可能性はあります。
バーチャルオフィスの住所が過去犯罪に利用されていた場合、その住所は「汚れた住所」として認知されることに。そうなれば、ネットで検索した取引先や顧客から嫌煙されたり、金融機関の審査で不利になる可能性があります。
そのためバーチャルオフィスを契約する際は、信頼できる事業者を選ぶことが非常に重要。次のポイントから総合的に判断しましょう。
①本人確認や審査をしているか
そもそもバーチャルオフィスは本人確認が義務付けられているので、やらなかったら即アウトです。
- マイナンバーカード
- 運転免許証
- 住基カード
- 保険証
- 住民票
などの書類提出を求められます。
大抵のバーチャルオフィスは、サイト上で申し込み手続きに関する記載があります。本人確認のステップがあることをチェックしましょう。
ただ審査方法は公開されていないので、実際どうかは外からではわかりません。なのでそれ以外の情報からも、その事業者の信頼度を測る必要があります。
②運営元がしっかりした企業か
運営企業がしっかりしているかどうかもポイントになります。上場企業や大企業であれば、信頼度は高いと判断できるでしょう。
基本的に守るべき信頼や既存顧客が大きい大企業ほど、コンプライアンスがしっかりしており、不用意なリスクは犯しません。上場企業ともなれば、上場時にデューデリジェンス(外部からの厳しいチェック)を受けるので、ふるいにかけられています。
③運営歴が長いか
他のどの業界でもそうであるように、運営歴が長い方が信頼できると言えるでしょう。
運営歴が長いということは、過去に大きな問題を起こさなかった(あるいは起こしたが、きちんと解決して乗り越えた)という証拠になるからです。
④法人銀行口座開設の紹介や実績はあるか
いくつかのバーチャルオフィスでは、法人銀行口座を開設するための銀行紹介をしています(注:実際に口座開設できるかどうかは審査次第です)。
紹介といっても、ホームページからリンクが飛んでいるだけの場合もあるのですが、少なくとも紹介関係が成立しているということは、「その紹介先の銀行は、そのバーチャルオフィスを善良な事業者とみなしている」という状況証拠になります。
銀行さんが認めているということは、その事業者は真っ当な審査をしている可能性が高そうだと推測できます。
⑤内覧・見学ができるか
内覧や見学という形で、現地のビルやオフィスを見て回れるかどうかも1つのポイントになります。
- 怪しい雑居ビルじゃなく普通のオフィスビルである
- 他に怪しい入居者がいないとか
- 室内が普通のオフィス風になっている
などをチェックすると良いでしょう。
また遠方で訪問が難しい場合もあるでしょう。怪しければ内覧や見学NGにしているはずなので、訪問OKの時点でプラス評価と考えて良いでしょう。
⑥犯罪臭のある口コミがないか
信頼できないバーチャルオフィスであれば、TwitterやGoogleMapで悪い口コミが投稿されている可能性があります。
一般的に悪い体験ほど口コミしたくなるのが人間の性質なので、ちゃんとしたサービスでも悪い口コミが投稿されることはあります。
悪い口コミの件数(多かったらそれはそれでダメだが)よりも、クリティカルな内容が含まれているかどうかをチェックしましょう。
まとめ
ごく一部の業種を除けば、バーチャルオフィスは違法でもなければ、怪しくもありません。過去に比べると法制度が整ってきており、安心して使える土壌が出来上がっています。
もし心配するとしたら、それはバーチャルオフィス自体の違法性ではなく、そのバーチャルオフィスに違法性のある業者が紛れ込んでしまうことです。どの事業者も入会者の審査はしているものの、外からではその程度を知ることはできません。
万が一「汚れた住所」と掴んでしまうと、全く無実のあなたの信用まで傷つきかねません。また住所を変えるにしても、法人登記している場合は、移転手続きがかなり大変です。
そのため最初から信頼できる事業者を選んで契約するのが大切です。運営企業の規模や運営歴、口コミなどから総合して、信頼できる事業者を選びましょう!
この記事を書いた人
管理人
バーチャルオフィスで起業した個人事業主 兼 マイクロ法人の社長。バーチャルオフィスの住所で、法人登記&法人銀行口座の開設も経験済み。
事業はメディア運営&ハンドメイド作品の販売。インターネット上で完結する事業なので、作業はもっぱら自宅。
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