インターネットサービスの充実により、個人でもネットショップを構えることができるようになりました。メルカリやminne、creemaなどのプラットフォームを使えば、誰でもネットショップをオープンできます。
そしてネット販売をする際は「特定商取引法」の対応が必須ですが、これが悩みどころ。住所や電話番号を公開しなければならないからです。
バーチャルオフィスを使えればプライバシーを守れそうですが、果たしてそれは合法なのでしょうか?結論を先に言うと、特定商取引法の対応にバーチャルオフィスを使ってもOKです。
この記事を最後まで読めば、次のことがわかります。
- 特定商取引法とは何か?
- どのような対応が必要なのか?
- バーチャルオフィスでの対応方法
プライバシーを守りながらネットショップをオープンしたい人は、ぜひご一読ください!
特定商取引法とは?
「特定商取引法(略して特商法)」は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です(消費者庁HPより引用)。
消費者トラブルが起きやすい次の販売方法に対し、事業者が守るべきルールとクーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています。
- 訪問販売
- 通信販売(←ネットショップが該当)
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引
- 特定継続的役務提供
- 業務提供誘引販売取引
- 訪問購入
元々は訪問販売や電話販売のようなビジネスがメインどころでしたが、インターネットの登場により通信販売(ネットショップ)がメインになっています。
後ほど詳しく解説しますが、ネットショップはサイト上に事業者の氏名・住所・電話番号などの表示が義務付けられています。違反した場合は、業務停止命令などの処分の対象になります。
ネットショップに必要な特定商取引法の対応とは?
通信販売(ネットショップ)における特定商取引法の対応として、次の項目をサイト上で記載しなければなりません。
- 事業者の氏名
- 住所
- 電話番号、メールアドレス
- 販売価格
- 送料、その他の付帯する費用
- 代金の支払方法
- 代金の支払時期
- 申込みの有効期限
- 商品の引き渡し時期
- 返品に関する対応、条件
- キャンセルについて対応、条件
ネットショップは、売り手と買い手がお互いの顔を見ずに取引をします。こういった情報があらかじめ提示されていることで、買い手は安心して商品を購入できるわけです。
記載内容のサンプル
記載内容のサンプルは次の通りです。
販売業者 | 株式会社 〇〇〇〇 |
---|---|
責任者 | 代表取締役 〇〇 〇〇 |
住所 | 〒111-1111 東京都〇〇区〇〇1-1-1 〇〇ビル |
電話番号 | 03-xxxx-xxxx ※受付時間 9:00-17:00(土日祝を除く) ※受付時間外は、メールにてお問い合わせください |
メールアドレス | info@xxxx.com |
運営元のホームページ | https://xxxxx.com |
販売価格 | 各商品ページをご参照ください |
その他の必要料金 | 送料:全国一律1,000円 代引き手数料:1回300円 |
支払い方法 | クレジットカード、代引き |
支払い時期 | クレジットカード:商品注文時に支払いが確定します 代引き:商品到着時に配達員へお支払いください |
商品の引渡時期 | ご注文から3営業日以内に発送 |
返品・交換対応について | 商品到着後14日以内に限り、返品・交換をお受付します 【返品・交換時の送料について】 商品に不具合等があった場合:弊社負担 お客様都合の返品・交換:お客様負担 |
記載を省略できる事項について
ネットショップの特定商取引法の記載は、省略が認められている事項が多数あります。全て羅列はしませんが、プライバシーの観点が気になる「氏名」「住所」「電話番号」も省略可能となっています。
そのため個人が自宅でネットショップをオープンする際に、ホームページ上で自宅住所や電話番号を公開する必要はありません。
ただし消費者からの開示請求があったら、これらの情報を「遅滞なく」提供しなければなりません。デフォルトでは記載しなくても、「開示して」と言われた相手には教えなければならないのです。
【注意!】ネットオークションは省略できない
記載省略が認められるのは、開示請求があったら情報を「遅滞なく」提供できる場合のみ。この「遅滞なく」がミソで、「消費者が申込みの意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって提供されること」を意味しています。
ネットオークションはリアルタイムで目まぐるしく入札が行われるため、遅滞なく情報提供するのは不可能とみなされます。よって記載の省略は認められません。
記載省略はビジネスする上で得策か?
なお記載が省略できるからといって、運営者の情報を隠すのがビジネス的に良いとは思いません。
「名前」も「住所」も「電話番号」も書いていないネットショップから買いたいと思うでしょうか?慣れ親しんだネットショップならまだしも、初見なら、「なんか怪しい...」とページを閉じるユーザーも多いのでは?
お客さんは別に運営者の住所を知りたいわけでも、電話をかけたいわけでもありません。しかし開示されてないと不安になります。
バーチャルオフィスの住所と電話番号を特定商取引法の記載に使用できる?
個人がネットショップを運営する際に、特定商取引法の記載で引っかかるのは「住所」と「電話番号」でしょう。名前はまだ良いとしても、個人を特定されるプライベート情報は出したくありません。
そこで使えるのがバーチャルオフィスです。消費者庁の特定商取引法Q&Aにバーチャルオフィスに関する記載があるので、これを参考に解説します。
住所について
特定商取引法で記載する住所は、「現に活動している住所」でなければなりません。
ネットショップでバーチャルオフィスを利用する場合、返品・交換の送付先はバーチャルオフィスに住所にするのが通常です。また商品発送の際の送付元もバーチャルオフィスの住所にするのが一般的でしょう(そうしないと住所を晒すことになるので)。
十分に「現に活動している住所」と解釈できそうです。消費者庁のQ&A内でも「バーチャルオフィスの住所を表示することによっても、特定商取引法の要請を満たすものと考えられる」という趣旨の記載があります。
電話番号について
電話番号は、顧客が問い合わせをした際にちゃんと通じる番号でなければなりません。発信専用番号など、かけてもつながらない番号はNGです。
ちゃんと問い合わせが成立すれば良いので、ダミー番号を用意して自分のケータイに転送すればOKです。バーチャルオフィス提供の番号から転送しても良いですし、「050plus」などの外部の格安IP電話サービスを使っても良いですね。
バーチャルオフィスの秘書代行サービスを使って、問い合わせの一次受けをしてもらうのもアリです。裏でバーチャルオフィス事業者とネットショップ運営者が連絡を取れるようになっていれば問題ありません。
なお24時間365日電話を取らなければならないわけではありません。受付可能な時間をサイトに記載しておき、時間外はメールで問い合わせを受け付ければOKです。
ネットショップ運営に必要なバーチャルオフィスの機能5選
ネットショップ用にバーチャルオフィスを使う場合は、次の機能が備わっているサービスを選びましょう!
- 住所貸し(必須)
- 郵便転送(必須)
- 法人登記(必要に応じて)
- 電話転送(必要に応じて)
- 電話応対代行・秘書代行(必要に応じて)
①住所貸し(必須)
特定商取引法の記載用の住所として、バーチャルオフィスの住所を使います。
住所貸しはバーチャルオフィスの基本中の基本機能なので、全てのバーチャルオフィスで提供されています。
②郵便転送(必須)
ネットショップでは商品の発送があるので、送り状に送付元の住所を書かなければなりません。もし返品・交換になれば、基本的には同じ住所に送り返してもらうことになります。ここで自宅住所を書いてしまうと、プライベートの住所が筒抜けになってしまいます。
そこでバーチャルオフィスの郵便転送を使います。バーチャルオフィスの住所を送付元にしておき、返品・交換の際はいったんバーチャルオフィスに送ってもらい、自宅に転送してもらうことにします。
郵便転送もバーチャルオフィスの基本機能なので、どのバーチャルオフィスでも提供されています。
③法人登記(必要に応じて)
もし法人名義でネットショップを運営するなら、法人登記が可能なプランを選択します。
大抵どのバーチャルオフィスでも、法人登記できるプランが用意されています。
④電話転送(必要に応じて)
特定商取引法の記載用の電話番号も取得しましょう。電話番号には様々な種類があります。
- 03や06などから始まる「市外局番の固定電話番号」
- 080や090などから始まる「携帯電話番号」
- 050から始まる「IP電話番号」
- 0120や0800などから始まる「フリーダイヤル・フリーコール番号」
どの番号を使ってもOKですが、「市外局番の固定電話番号」か「IP電話番号」で良いと思います。
一般的にオフィス住所に紐づく「市外局番の固定電話番号」は信用度が高いと認知されています。バーチャルオフィス住所に紐づく「市外局番の固定電話番号」が使えるなら、+αの費用をを払う価値があります。ただ個人レベルなら、「IP電話番号」で十分でしょう。
なお電話番号をオープンにすると、どこからか営業の電話が来ることがあります。プライベートの電話番号を載せるは絶対にやめておきましょう。
⑤電話応対代行・秘書代行(必要に応じて)
電話転送の場合は、自分で問い合わせを受けることになります。件数が多いとちょっと面倒ですよね。
そういうときは、バーチャルオフィス側で一次対応してもらい、その後に要件を知らせてもらう「電話応対代行(秘書代行とも呼ばれる)」のオプションを使いましょう。
実際にスタッフが稼働するのでやや値段は張りますが、問い合わせ件数が一定数以上あれば費用対効果に見合います。
共有電話番号があるバーチャルオフィスもオススメ
実は特定商取引法で記載する電話番号は、そのネットショップ専用の番号である必要はありません。
バーチャルオフィスの中には、会員全員が利用できる「共通電話番号」を用意しているところがあります。電話がかかってきたらバーチャルオフィス側で簡単な応対をするか、留守電を残しておいてくれます。
特定商取引法の対応くらいしか使い道がない電話番号ですが、格安で使えるのが魅力です。
まとめ
ネットショップを開業するなら、その規模に関わらず特定商取引法の対応が必要です。「氏名」「住所」「電話番号」などをサイト上に掲載しなければなりません。
バーチャルオフィスを使うことで、プライベートの「住所」と「電話番号」を公開せずに済みます。バーチャルオフィスの基本機能だけで対応可能なので、基本的にはどのバーチャルオフィスを選んでも大丈夫です。
個人でネットショップを開くなら「NAWABARI」と「京都朱雀スタジオ」が特に安く、共有電話番号が無料でついてきます。ぜひ検討してみてください。
この記事を書いた人
管理人
バーチャルオフィスで起業した個人事業主 兼 マイクロ法人の社長。バーチャルオフィスの住所で、法人登記&法人銀行口座の開設も経験済み。
事業はメディア運営&ハンドメイド作品の販売。インターネット上で完結する事業なので、作業はもっぱら自宅。
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